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伊藤雅雄  インバウンド旅行研究家
伊藤雅雄 インバウンド旅行研究家

訪日客によるクレジットカードの利用、意外と進まない?


2015年12月30日

訪日インバウンド客によるクレジットカードの利用率、なぜか伸びていないようですよ。

現金を使って決済したとの回答はほぼ100%

 日本の金融システムは欧米の先進国と比べても引けを取らないレベルを誇っていますが、国内でのクレジットカードの利用率は依然として低いようです。
 外国人訪日客が日本で消費する際の決済方法をみると、「クレジットカードを利用した」との回答は5割強にとどまっています。これまで述べた通り、中国からの訪日客が「インバウンド消費」の大きな部分を占めていますが、同国では国際クレジットカードの普及率が低いため、そもそもカードを使いたくても使えない、という背景があります。ただ、中国で広く普及している「銀聯カード」などのデビットカード(自身の口座の残高から直接決済するカード)による決済も6%程度と、日本の金融機関が積極的に利用端末を増やしている割に利用率は芳しくありません。
 一方、現金を使って決済したとの回答はほぼ100%です。

商店や飲食店でのカード決済が普及すれば外国人による消費がさらに増えることでしょう

 例えば、日本の公共交通機関で切符を買うのに、カードが使える自動販売機はJRの端末の一部にとどまっており、「日本で電車に乗る時、現金で切符を買わされるのはとても面倒」と外国人には非常に不評です。
 米国や欧州連合(EU)の先進国、さらにアジアの多くの国々でも「たいていのモノがカードで買える」状況にあるため、財布にはごく少額の現金しか持たないという傾向があります。そのため、外国人は、日本での滞在中もクレジットカードで支払いたいけれども、日本には依然として現金しか受け付けないお店が多いため、渋々現金で支払っているという現実があります。日本国内の商店や飲食店でのクレジットカード決済が普及すれば、外国人による消費がさらに増えることでしょう。免税店の許可取得と同時に、自店でのカードによる代金収受についても検討すべきです。
 ちなみに、外国人が日本円の現金を調達する際、最も多い手段が「現金自動支払機(ATM)からの引き出し」です。もちろん空港や銀行・郵便局でも各国外貨から日本円への両替を受け付けていますが、海外では一般的に「外貨両替はコストと手続きの時間が余計にかかる手段」と嫌われていることから、ATMで円貨を引き出す訪日客が多いのもうなずけます。
 日本国内で外国発行のクレジットカードを使って現金が引き出せる端末は、郵便局(ゆうちょ銀行)や、イトーヨーカドーやセブンイレブン(セブン銀行)に置かれています。いずれも英語などでの案内が表示されます。

インバウンド消費 外貨両替

伊藤雅雄  インバウンド旅行研究家
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伊藤雅雄(いとうまさお)
大学在学中に、中国語と比較文化論、シルクロード史などを研究。卒業後、旅行代理店に就職するも、1997年の香港返還を機に、エッセイやコラム執筆、書籍制作に携わる編集者兼ライターに転向。過去25年以上にわたり、添乗や視察、取材などの目的で日本人が行きそうな外国の街のほとんどを訪れている。特に中国をはじめとするアジア各地に土地勘がある。

2007年夏より英国・ロンドンに在住。2014年からは「日本最大級の旅行情報サイト・トラベルコちゃん」のレポーターとして従事しているほか、バーチャル編集プロダクション・Watch! CLMBの編集主幹として、アジアの新興国に関する書籍の制作に携わっている。
著書に、日本を訪れる中国人観光客について論じた「中国人ご一行様からのクレームです(三修社刊)」がある。

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