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アジア新興国で資産形成|井澤真治
アジア新興国で資産形成|井澤真治

「歪みすぎで怖い」急成長の日本人街、タイ・シラチャー


2015年7月25日

「歪みすぎで怖い」急成長の日本人街、タイ・シラチャー
タイ東部の港町・シラチャーは、1万人以上の日本人が集中して住んでいます。街は急速な成長で、住宅不足に。投資先としては適切なのでしょうか?
 阪神淡路大震災直後、新潟への物流ルート(陸路)が断たれ、やむを得ず釜山経由の船便で届けたら、思いのほか低コストであったという逸話があります。この様に、何か問題が発生したタイミングで見つけ出した解決策が実は優れていたと気付かされることがあります。薄々感づいていたことだとしても、大災害に背中を押されて初めて行動に移せるということもあるでしょう。
 そんなことが今バンコク周辺で起きています。4年前の大洪水でバンコクの北方にある主な工業団地は浸水し450社以上の企業が被災しました。やむなく、洪水の被害がなかった東部の工業団地への移転が進むと、物流の優位性がクローズアップされてきました。しばらくは、官民あげての更なる開発と発展が約束されています。
 東部のチョンブリー県やラヨーン県の工業団地は、2014年に特別自治市に格上げされたレムチャバンに近接し、その巨大貿易港の恩恵を受けるばかりか、スワンナプーム国際空港にも近かったり、カンボジア、ベトナム方面へのアクセスにおいても北方の工業団地より有利な位置にあったりします。道路の拡張や鉄道網の整備に関する話題も続々と出てきています。
 そのような状況下で、日本人が続々と集って、暮らし、急成長させている街が、レムチャバン港から北に車で30分程度の所に位置する港町シラチャー(Si Racha)です。
 日本人の数は1万人超、日本人学校の生徒数は400人に達したとも言われています。

住宅が足りない

 で、ここで何が起きているかというと、住宅の供給不足という事態に陥っています。低品質の住宅やそのサービスにとんでもない家賃設定がされており(場所によっては、バンコクのコンドミニアムよりボロくても家賃が高いというケースも)、それでも数十人待ちであったり、中心地から離れて探すなど住環境が良いとは言えません。そこに目をつけた不動産開発が活況を呈している訳です。
 最近までは利回り15%超も普通だったようですが、今後は良質な高級コンドミニアムが続々と完成して供給過剰となってくるため利回りは5~6%に向かって旨味は薄れていきます。

一転、供給過剰に?

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シラチャーの新築コンドミニアムの価格表例

 2015年7月下旬に発表された高級コンドミニアムのプリセール価格は1平方メートルあたりの単価が9.5~10万バーツ(33万〜35万5,000円)でした。ニーズがあるとはいえ、こんな郊外で、55平米弱の物件が560万バーツ弱、約2,000万円。より生活利便性が高いバンコクのバンナーエリアよりも高いのです。今現在なら、この物件であれば月賃料70,000バーツで貸して利回りは15%位にはなるでしょう。ただ、大量供給後の2年後の完成時はどうなっているのか分かりません。

私はシラチャーはパスします……

 シラチャーへの投資はとても良いとは思います。戦略的に取り組めば手堅く勝機ありなのは確実でしょう。面白いと思います。
 ただ、ここは冷静に目の前の高利回りを一蹴して、パスすることにしました。港町とはいえ、漁港やビーチではなく岩場だからというのが理由、ではありません。それも気になるところではありますが、最大の理由は右向け右の日本人による新興の街への嫌悪感です。人口23万人弱あるとはいえ、高級コンドミニアムが乱立する様相は、自然に育まれてきた町でないニュータウンのようで、右向け右の日本人向け物件は、冒頭のようにより良い選択肢が発見された時には現地本来のニーズとはかけ離れており、何かあればゴーストタウンと化してしまうことも、イメージしてしまうのです。AEC発足後の産業地図がどう塗り替えられるのかも気になります。例えば、割高となっているカンボジアの電気代やシアヌークビル周辺の開発などにも目配せしておくべきかもしれません。環境が激変したら、北から移動したように更に東へと移転していくこともありうるかもしれません。
 やはりシラチャーのような少ない要因で急激に変貌するような場所ではなく、長い時間をかけて自然と育まれてきたが、さらに再開発による一層の継続的発展や高騰も期待できる、そんな穴場をアジア新興国の中から探し求めていきたいと思います。

不動産投資 タイの日本人街

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