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フランツさとみ
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「WE WILL RISE!」ミュンヘンで行われているアフリカ系難民によるハンガーストライキ


2016年9月28日

「WE WILL RISE!」ミュンヘンで行われているアフリカ系難民によるハンガーストライキ
2016年9月7日から、ミュンヘンの中心部において「WE WILL RISE!」をスローガンに、主にアフリカから来た難民たちを中心にハンガーストライキが行われている。先のイベントには約200人が集まった。
秋の気配が深くなってきたドイツは冷え込みが厳しくなっているが、参加者は日増しに増えている。
彼らの主張はこうだ。
「私たちは、難民に対する全ての強制送還を中止し、ドイツに滞在する市民権を獲得するためにここに集まっています。難民に関する法律を変えてもらいたい、政治家と話をする機会が欲しいのです。

私たちは、法律が十分に機能していない、非人道的な行為がまかり通っている国からやってきました。私たちの国では政治はビジネスで、宗教は人、都市、国家間の争いのために悪用されています。民主主義を名乗っている国家でも、実際は独裁によって支配されているのが現状です。だから、私たちは自由と正義を得るために、祖国を離れ欧州を目指すのです。ある者は欧州を目指す過酷な道中で命を落とし、ある者はやっと欧州の地を踏んだのに入国を拒まれ、やっとのことで欧州に入国出来た者は憎しみと拒絶の視線を頻繁に浴び、自分が尊厳を持った人間ではないと感じ、自ら死を選ぶしかない気持ちへと仕向けられます。
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難民がドイツに到着すると行政によるインタビューが行われ、出身国に応じて生活の基盤を築くための市町村へ移動し、ドイツ語コースを受講できる機会や労働許可を付与されます。国籍によっては強制送還されることになります。これは、基本的人権や正義に基づく判断ではありません。国籍によって判断されているのです。
原則として、ドイツ語コースに参加する許可が下りない難民に労働は許可されません。これが若い難民の場合はどうなるでしょう。ドイツ語学校に通えず、充分な教育を受ける機会を得られず、仕事もない。難民キャンプでビザが下りるかどうかをひたすら待つだけの日々を過ごします。かといって他の国へ行くことも祖国に帰ることもできません。私たちの国では、戦争や貧困、迫害が蔓延しているのですから。

私たちが過去に行ったストライキでは、滞留義務に関する法律を緩和させることに成功しました。しかし、最近、難民を取り巻く状況はさらに厳しくなっているのです。嫌がらせのような既存の法律に、さらに2つの項目が追加されました。
一つ目は、 2016年8月6日から、私たちがドイツ国内で住む場所は政府によって管理され、自分たちの自由な意志で住む場所が決められなくなりました。
二つ目は、もしドイツにやってきた難民が何かしらの疾患を抱えていた場合、強制送還への理由とみなされることです。病状がより悪くなったり生命を脅かすような疾患を抱えた場合のみ、ドイツに滞在し治療を受けることが出来るのです。

私たちがストライキを始めてから毎日のように、西欧のイスラム化に反対する欧州愛国主義者たちがやってきて、人種差別のチラシを巻き、私たちを攻撃します。ある男は給水タンク車で乗りつけ、私たちをめがけてホースで放水してきました。

難民を取り巻く問題を解決することは不可能ではありません。正義はどこかにあります。ドイツの人口の1%は難民で、彼らの多くは非市民として人権へのアクセス権がありません。私たちは皆さんと同じ人間で、正義と権利が欲しいのです。これらの権利を得るためには市民権が必要です。現在は難民として滞在は出来ていても、市民権が得られれば法律へとアクセスできます。人間として暮らすために教育、仕事、活動、居住場所を選べる自由が欲しい。そして、私たちは人種差別に対して抵抗すべく声を上げ続けます」。

9月18日にベルリンで行われた市議会選挙で、メルケル首相率いる与党CDU(ドイツキリスト教民主同盟)が大敗し、反移民を掲げる野党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進した。メルケル首相は自身の難民政策への誤りを認め、「時間を数年前に戻したい」とも発言した。ドイツにいる難民を取り巻く環境はさらに厳しくなることが予想される。ストライキを行っている彼らの訴えは、果たして届くのであろうか。
インタビューアー:フランツさとみ
2013年からミュンヘン在住のフリーライター。旅行記事の他、昨秋から積極的にシリアなどからの難民に関する調査を行っている。

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