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ロンドンの移民向け英語レッスン教室にて(1)「年末のパーティ」


2016年12月26日

ロンドンの移民向け英語レッスン教室にて(1)「年末のパーティ」
ロンドンでは、英語を母国語としない移民向けのレッスンが催されています。日本人が参加しているケースはとても珍しいそうですよ……。
ロンドン東部にあるニューハムカレッジのESOLクラスに通い始めて3年が経ちました。ESOLクラスとは、「English for Speakers of Other Languages(英語を母国語としない人たちの英語のクラス)」の意味です。
初心者向けのクラスである「エントリー1」からスタートして、今年の9月から「エントリー3」のクラスに入っています。
少しずつこの学校のことをお話ししていくつもりですが、今日は先日行われた「持ち寄りパーティー」の様子を聞いてください。

「今年最後の授業はパーティーをしようと思うけど……」

12月、タームAの試験が終わってから最初の授業でレスリー先生が言いました。
「みんなで食べるものを持って来て、ゲームをしたり、踊ったりするの、どう?」
すぐにミャンマー人のアダムが賛成して、特に反対意見を言う人もなく、早速アダムが紙とペン(彼はいつもペンを持たずに学校へ来て、必ず誰かから借りています)を持って、一人一人を廻り始めました。どんな食べ物を持ってくるのか聞いています。
私は、「ちょっと面倒くさい」というのが本音でした。いつも通りの授業をやって、休みの前に課題(宿題)を出してもらうほうがいいなと思ってました。絵にかいたような「まじめな」日本人ですかね。

「何を持ってくる?」アダムはきっと「お寿司」という私の答えを期待していたはずです。
寿司はSushiとしてすっかりロンドンの食に定着していますが、日本人の主婦が家でにぎり寿司を作ることはほとんどない、ということは誰もわかってくれません。そしてカッパ巻きや太巻き、いなり寿司、ちらし寿司はSushiとして認定されないのです。

クラスメイトの多くはムスリム……

おまけに私のクラスメイトの半分以上はムスリム(イスラム教徒)です。パーティーのタイトルが「クリスマスパーティー」とならないのもそれが理由です。
ムスリムの教義である「ハラール」について、特に私は理解しているわけではないのですが、少なくとも「豚とアルコールはダメ(もっと複雑な教義があるのでしょうが)」と認識しています。
酒はもちろん、みりん、醤油にもアルコール分は含まれています。この機会にあれこれ台所にある食品の成分表示を見てみると、マヨネーズにもアルコール分が、クリームシチューの素には豚脂が含まれていました。
さらにトンカツや生姜焼きを作っている私の台所で、私が調理したものをこの人たち(アダムもムスリムです)は食べてくれるのかしら、と思いました。
ますます面倒です。
「考える…」とアダムには言いました。
「食べものを持って来れないなら、ナターシャはお皿とコップとナプキン、一番安いやつでいいから、買って来てくれればいいよ」アダムは次々と決めていきます。お酒はなしですが、きっと、飲み物担当もいるのでしょう。
会費とか、会場設定とか、出し物とか、ごちゃごちゃ細かい話は全くなし、
自分が作れるものを普通に用意すればいいのかな、と私もそんな気になりました。
レスター先生は(ウェールズ出身)「あんまり辛いのはダメ」なんて、ちゃっかりカレーのリクエストをしていました。
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巨大鍋にバングラの炊き込みご飯!

当日、私が教室に行くと、もうテーブルの上にはバングラデシュの同級生たちが持ってきたごちそうが並んでいました。
大きな鍋ごとのビリヤニ(炊き込みご飯)、どうやって炒めたの?ってくらい大量の焼きそば、春巻きがあったので中国人のヤンさんに「揚げたの?」って聞いたら、それもバングラデシュ人のシュリが作ったカレー味の春巻きでした。
インド人のパティマが持ってたカレーにはゴロンと骨付き肉の塊が…羊でした。
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ブルガリア人のレッジーナは大晦日に食べるおみくじ付きパン(パニッツア)を焼いてきていました。必ず一緒に飲むという飲料(ボザというブルガリアの国民飲料)をコップに並々と注がれたのですが、これは、ちょっと…どろんとした発酵飲料で臭い。ヨーグルトではなかったです。
タンザニア人のアニサが作ってきた揚げパン(ヴィトンブア)はほのかに香辛料が…カルダモンだそうです。
スペイン人のホアンナは「私はタバコが食事」と豪語するだけあって(?)なんと持って来たのは水でした。
近所のスーパーで売られている甘い、甘すぎるケーキも数種ありました。きっとこれがおいしいのでしょうね。
もっとお料理のことをあれこれ聞きたかったのですが、いかんせん私の語学力が足りません。
でも、こんなことがなければ、タンザニアの揚げパンなんて絶対食べることはなかっただろうなとか、あらためて日本人って本当になんでも食べちゃうんだな、と思いました。気がついたら、ボザは飲み干していました。頂いたモノを残しては失礼かな(やっぱりこれも日本人でしょうか)と思いつつ飲んでいたら、飲みきっていました。
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特に始まりの挨拶などなく、みんな適当に好きな物を取って、食べて、そのうち他のクラスの人たちもやって来たり、ESOLクラス担当の職員モハメッドが呼ばれて、やっぱり「寿司はないのか?」と言われたり、ゲームはクラス対抗で椅子取りゲームの熱戦が繰り広げられ、インド音楽に合わせて踊ったり…
最後に何人かのクラスメイトとハグをしてお別れしたのですが、汗ばんでる人もいるくらい、盛り上がったのです。

結局、私は、ちょっと甘い卵焼きとキドニービーンズ(赤インゲン豆)を混ぜた蒸しパンを持って行きました。
ムスリムのアニサが卵焼きを「おいしい」って食べてくれて、とてもうれしかったです。

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