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フランス地方議会選挙=FNが躍進を逃した原因と政治家への問題提起


2015年12月16日

フランス地方議会選挙=FNが躍進を逃した原因と政治家への問題提起
極右政党が一気に支持を集めたフランスの選挙。ただ、予想ほどには伸びませんでした。
先週の第1クールの結果とは一変して一議席も獲得できなかった極右政党FN。
結論としてはフランス国民はそこまで右傾化する傾向にはならなかったと考えます。
一方で、仏政権をはじめ世界各国の政治家に重い課題を突きつけました。

今回の選挙のおさらい

広域地方行政区での選挙について、おさらいしてみましょう。前回の記事で解説しましたが、選挙区は海外領土を合わせて全部で17、まず第1クールで10%の得票を達成した政党のみが第2クールの投票に参加できます。

今回は第1クールでのFNの躍進に脅威を感じた与党の社会党が、FNへの支持が色濃い北部と南部の選挙区で、前大統領のサルコジ氏率いる共和党(旧国民運動連合)と共闘を表明。それにより、決選投票の色合いが濃くなった一面もありました。

仏地方議会選挙の結果

結果、共和党は注目の本土13選挙区(海外領土で他に4選挙区)中7つで勝利。社会党は5選挙区での議席獲得し、第1クールで最大の得票率を達成したFNは議席獲得を逃しました。

日本ではあまり考えられない左派と右派との協力ですが、それだけ、第1クールでのFNのインパクトは大きかったと言えます。先月起こったテロの影響と今年後半で盛んに報じられたEUへの難民流入に対し、国民が敏感に反応し、そこにFNの「我々のフランス」といった文言がフィットした可能性はあります。

しかし、過激な発言が目立つFNのルペン党首の言動は、「自由・平等・博愛」を国是とするフランスに危機感を呼び戻したことも事実でしょう。投票率も先週の43%から50%強へと上昇。最終的にFNのルペン党首は、過去最大の得票を叫ぶだけに終わりました。

突きつけられた課題

今回の選挙は2017年に行われる仏大統領選挙を前にした最後の大規模な選挙でした。ルペン氏は大統領選に名乗りを上げることを表明していますから、この地方議会選挙で勢いに乗りたかったはずです。しかし、フランス国民の多数はそれを望みませんでした。ここに欧州の右傾化の流れは、まだ多数派にはなっていないと客観的に見ることができます。難民流入で、若干パニック状況にあったヨーロッパが少しずつ落ち着いてきている、といったことも言えるでしょう。

しかし、難民問題は年が明けた後も続く問題です。中東の混乱状況を見れば数年続く可能性もあります。テロの脅威は、ただ武力や警備力を高めればいいというのではなく、国内にくすぶる社会問題をいかに希望の持てるものに変換していくかが大きな課題です。

先進国内で以前のような高度経済成長が目指せない現在、ともすれば、国民感情は内向きになってしまいがちです。しかし、そこにとどまってしまったならば、拡大するグローバリズム・情報化社会の中では取り残された存在となってしまいます。社会に向けて、どういった未来を創造していけるのか。今回のフランス地方議会選挙の顛末は、現地だけでなく世界各国の政治家に示された大きな問題提起と考えます。
写真は投票の様子

フランスの選挙

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