仏地方議会選挙第1クール 極右のFNが躍進
2015年12月8日
フランスの広域地方行政区の議会選挙の第1クールが終わりました。極右政党FNの躍進が盛んに報道されていますが、結果はまだ確定していません。
今回の選挙の仕組み
フランスの広域地方行政区は海外領土を含め全部で17区域に分けられています。今回の議会選挙は2段階で構成されていて、政党が議席を獲得しようとすると、まず第1クールの選挙で最低10%の得票が必要となります。その上で、1週間後の次の選挙を持って議席が確定します。有権者の数は4460万人。今回話題になっているのは、この選挙が2017年に予定されている大統領選挙に向けた最後の大型選挙だからです。また、近年勢力を伸ばしている極右的主張の政党FN(国民戦線)が議席を伸ばすか否かに注目が集まりました。
第一クールの結果
12月6日に行われた第一クールの結果、FNは全体で28%の得票を獲得。サルコジ前大統領率いる国民運動連合は約27%、オランド現大統領の社会党の得票は23.5%にとどまりました。FNは結党以来最大の得票をあつめ、また、6つの行政区でトップとなりました。このままFNの人気が続くとすれば、現政権には大きな脅威となります。
FNのルペン党首は「我々はまず自国のことを考えなければならない。国民は我々を選んだ。疑うべくもない事実だ。」と述べ、躍進に自信を持っています。
極右躍進の背景とEUの今後
今回の選挙は13日のテロ以降しかれている非常事態宣言の下で行われました。投票所でも武装警官による手荷物検査が実施されています。13日の同時多発テロの記憶がはっきりとしていて、また周りの環境でも厳戒態勢の中で行われた選挙と言えるでしょう。ある意味特殊な状況の中で行われた選挙ですから、フランスの国自体が右寄りになりつつあるというのは早まった考えかもしれません。しかし、連日のIS空爆の報道、12日土曜日に発生したロンドンでの通り魔事件等、ショッキングなニュースが愛国的もしくは排他的な感情を後押ししていることは否定できないのも事実です。
まだ目だった事象はないにしても、外国人や特定宗教排斥の流れが色濃く反映されたとするならば、このフランス地方選挙の結果はフランス国内にとどまらず、EUの根幹を揺るがしかねない問題へと発展していきます。
たとえば、域内の移動の自由を保障しているシェンゲン条約。加盟国が自国保護もしくは流入民の管理を強化しようとするならば、この条約の正当性はだんだんと薄れていくでしょう。域内のヒト・モノ・カネの自由こそがEUの基本原則ですが、これが保障されない未来もうっすらと見えてしまいます。
EU中が注目するフランスの広域地方行政区の議会選挙。次回選挙の投票は13日の日曜日。同日未明に結果が発表されます。
トップ写真:満面の笑みで記者会見の臨むFNルペン党首