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欧州に向かう難民・移民たち【在英ジャーナリストの雑感】


2015年9月4日

欧州に向かう難民・移民たち【在英ジャーナリストの雑感】
欧州ではいま、シリアなどからの難民たちの動きが大きな問題になっています。在英メディアウォッチャーでジャーナリストの小林恭子さんからコラムを寄せて頂きました。
欧州に向かう難民・移民たちの様子が、英国メディアでは毎日、大々的に報道されている。

取材を受けている人を見ると、英語が上手な人も少なくない。一人ひとりが生身の人間であることが伝わってくる。シリアからやってきた人ー女性や子供たちもーーを追い払うわけにはいかないだろう。

すべてがつながる世の中になってきた。西欧の生活の様子は世界の各地に広がる。誰だって、より良い生活をしたい。静かなところで生きたいだろうし、命が安全なところで子供を育てたい。より良いところで生きたい気持ちはすべての人間に共通だ。
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▲海岸に流れ着いた3歳児の写真はショッキングだった▲

切羽詰ってやってくる人たちに、戦時中のユダヤ人の姿が重なってしまう。ドイツが率先して受け入れようとしているのも、昔のことがあるからかーー。とにかく助けるしか、ないのではないか。返すなんて、とてもできそうにない。欧州にとって、第2次大戦以来の、急増する難民・移民問題の処理は最大の危機かもしれない。アイデンティティーにも関連してくるからだ。

理想郷としての欧州は、その崇高なアイデアを守るためにも、人道的な、抜本的な政策をとらざるを得ないだろう。「欧州って、何?」と言うことを、いろいろ考えさせられる。

欧州=EUは自分たちだけの生活圏をより良いものにすることに何十年も力を注いできた。しかし考えてみれば、より良い欧州になればなるほど、欧州の外にいる人は、中に入りたいという気持ちを募らせる。

欧州のうちとそとの壁。これを今、崩す動きが難民・移民の波なのだろうと思う。トルコは欧州と比べ物にならないぐらい、シリア難民を受け入れてきたと聞く。

欧州への難民・移民問題は、出身国の生活苦・紛争から逃れてきた人々だけれど、中東やアフリカに何世紀も干渉してきた欧州、米国の責任もあるだろう。

これまでの干渉の「付け」として、難民・移民たちの一部を受け入れるというのはどうか・・・と知人のオーストリア人教授が話していた。

米英には外国に武力行使をしたり、外国の野党勢力や抵抗勢力にさまざまな支援をすることをやめて欲しいと思う。他国を政治的・軍事的に引っ掻き回すことを、できれば止めてほしいものだ。

日本も、何か、できないものだろうかー。はるかに遠い国であることは承知しているが。
【小林恭子さんプロフィール】英国、欧州のメディア状況、社会・経済・政治事情を各種媒体に寄稿中。著書『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス(新書)』(共著、洋泉社)。
Twitter @ginkokobayashi 
Facebook ginko.kobayashi.5
サイト http://ukmedia.exblog.jp/

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