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石田 奈帆美
石田 奈帆美

​​アイスランド滞在記(1)~クリエイティヴィティの源泉~


2016年10月22日

​​アイスランド滞在記(1)~クリエイティヴィティの源泉~
氷の国、アイスランド。ヨーロッパ最北端に位置する小国には、自然の恩恵を受けた様々な魅力が宿されていました。

「氷に覆われた魅力」

アイスランドと聞いて、イメージできるものはあるでしょうか?私は、具体的に浮かべられるものはほとんどありませんでした。世界地図のどこに位置するのかもわからなかったほどです。ほぼ無知状態の私がイメージできたものは、「北極の様な寒い国」「雪に覆われた土地」「寒い国に住む冷たい人々」、、、など、とりわけ明るいイメージはありませんでした。そんな無知のおかげもあってか、私のこの国に対する印象は、渡航後180度良い印象へと覆されました。

「澄んだ空気と、澄んだ光」

最も魅了されたものは、なんといっても自然です。自然の純度が半端なく高い、そのように感じました。

面積は、北海道を一回り大きくした程度。人口は約30万人。日本の中規模都市レベルで、私の地元埼玉県川越市とほぼ同等です。北海道の人口が約550万人なので、北海道より広い土地に、北海道以上の広大な自然が広がっている、とお伝えすればイメージしやすいでしょうか。

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渡航時期は9月中旬。夏は終わり、冬に差し掛かる直前でした。日が沈むのは21時ごろ。昼の時間は長いものの、日中はほぼ曇り空、晴れ間は時たま差す程度。最高気温は10度前後。全体的に曇り空で寒い気候でした。首都のレイキャビック空港に到着した時は、どんより曇り空、時たま雨、という冬の様な気候に出迎えられました。けして明るい気分になるような気候ではないのですが、空港から出てヒンヤリと澄んだ空気を肺に吸いこむと、体の細胞が目覚める様な、眠っていた体が起き出す気持ち良さを感じました。

全体的に曇り空ですが、変わりやすい天気のためたびたび晴れ間が差していました。特に朝日は最高に気持ちがよく、雲から覗く太陽からこぼれる日差しは、身体にじわりと染み込みます。朝日は日本でもどこの国でも気持ちの良いものですが、アイスランドの格別に澄んだ空気に差し込む光は、味わったことのない澄んだ光でした。澄んだ空気は誰しも感じられると思いますが、光が澄んでいると感じたのは初めてでした。「澄んだ空気には、澄んだ光が差し込む」と、しみじみ感じました。

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「澄んだ水」

澄んでいるのは空気と光だけではなく、水も同じでした。日本のように地震が多いこの島国では、地熱活動が活発で温泉が湧き出ます。活火山や休火山がたくさんあり、時に大噴火も起こります。そんな土地から湧き出る水は非常に澄んでいて、一般家庭の蛇口をひねった水がそのまま飲めるほどです。日本で売っているどのミネラルウォーターよりもおいしく感じました。宿のシャワーお湯からは、硫黄の匂いがはっきりと感じられました。人間の体は70%以上が水分だといいますが、毎日このような澄んだ水を摂取していれば、さぞ健康な体になるのだろうと思いました。

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「澄んだ空気+光+水=クリエイティヴィティ?」

自然の恩恵により盛んな観光業ですが、盛り上がっているのは観光だけではありません。例えば音楽産業。たった30万人の小国から、世界的に有名なアーティストが輩出されています。最も名高いのはビョーク。国内では大御所のようで、Iceland Airの機内では彼女の曲が流れていました。他にはシガー・ロスやムームなどが名を馳せています。「ICELAND AIRWAVES」という、大規模音楽フェスも開催されているようです。興味のある方はぜひ聴いていただきたいですが、アイスランドの音楽は全般的に独特な雰囲気があり、繊細さを感じます。私はとても好きです。

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また、ファッションも魅力的でした。羊毛が盛んなためセーターなどのニット製品が豊富です。首都レイキャビックの目抜き通りには、小さな通りに幾つものハイセンスなファッションブランドが目につきました。ほとんどは国内ブランドとのことです。繰り返しますが人口30万人の国です。そんな小国から幾つものファッションブランドが立ち上がっているとは、驚きました。

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IT業界も盛んで、特にインターネット普及率が高く、IT関連の輸出が伸びているようです。IT技術開発への関心が高く、国民は最新テクノロジーズ好きだそうです。実際、街中を走るバスは現金での支払いは一般的でなく、みな定期券かアプリで支払いをしていました。少し話しはそれますが、一般家庭ではガスは使われておらず、地熱発電により温められた水で発電した電気コンロを使っています。ガスを使わない理由を現地の人に聞いたところ、「ガスボンベを運ぶ人がいないから」と聞いて、可笑しくも深く頷きました。人口が少ないため、ITや金融を含むインフラは、テクノロジーの力で人手を要さない手段で賄っているようです。

こうした盛んな音楽、ファッション、IT産業を見ていて思ったことは、アイスランドの人々はとてもクリエイティヴであるということ。そして、彼らをクリエイティヴたらしめるのは、その大自然なのではということ。「純度の高い自然が、人間のクリエイティヴィティの源泉になっているのでは」、と思いました。実際に私も数日間アイスランドに滞在したことで、感覚がかなり研ぎ澄まされました。自然の繊細さを感じ取り、思考は軽やかになり、自然との一体感を味わいました。特に広大な自然を眺め続けて感じたことは、自然そのものがクリエイティヴであるということです。一見単調な景色です。同じような光景が永遠と続きます。しかし、雪の結晶が全て異なるように、何一つとして同じ自然はないのです。

アイスランドの澄んだ大自然の中には、豊かな時間を過ごすヒントが隠されているかもしれません。

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北欧への旅

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