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石田 奈帆美
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イギリス滞在記(2)~コーヒー一杯、英語でなんと注文しますか?~


2016年10月13日

イギリス滞在記(2)~コーヒー一杯、英語でなんと注文しますか?~
イギリス滞在中、接客業に携わる人々の「コミュニケーションの質」について、日本と大きな違いを感じましたーーヤンゴンで駐在していた石田奈帆美さんがレポートします。
例えば英語でコーヒーを注文したい時、なんと言いますか?イギリスの接客を受けて感じた、日本の接客業との違い、コミュニケーションのあり方について思ったことを書きます。

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イギリス滞在中に受けた主なサービスは、カフェ、レストラン、コンビニ、バス。日本でも日常的に使っているものです。これら接客業の人々との関わりは一瞬。僅かで些細なやり取りですが、接客業に携わる人々の「コミュニケーションの質」について、日本と大きな違いを感じました。

コーヒー一杯、英語でなんと注文しますか?

滞在中は、ほぼ毎日カフェでドリンクを買いました。スタバなどのチェーン店から個人店まで様々です。現地の人々の注文方法を都度そば耳を立てて聞いていると、皆一様に決まり文句の「Can I have〜?」を使っていました。レストランにも何度か行きました。日本のファミレスというより個人店の利用が多かったのですが(そもそもファミレスというものがイギリスにはないのですが……)、ほとんどの店で店員さんから味はどうだったか、などと友達のように気さくに声をかけられました。その話し方から、自分とコミュニケーションを取ろうとする意図や態度を感じました。日本でも同じケースはありますが、多くの場合において、義務感で言っているか、マニュアルの一部だろうということを感じます。「その話し方、友達にしないでしょ!」ということを頻繁に思います。

客と対等なイギリスの店員、客を持ち上げる日本の店員

こうしたやり取りを通じて思ったことは、彼らの接客には「同じ立場における、双方のやり取りがある」ということ。接客という役割を果たすことはイギリスも日本も同じ。流れ作業もあれば同じセリフの繰り返しもあり。役割を果たすことに立場は関連していません。しかし、日本ではお客様は神様精神が未だ根付いるようで、店側がお客さんを持ち上げる、店側=下、客側=上という、役割と立場の関連性をみます。特別なお願いをする場合を除いて、日本語での注文で「〇〇お願いします」とは聞くけれど、「〇〇を頂けますか(Can I have~?)」とはあまり聞きません。逆に英語の場合は、客=上という意識がないから、疑問形での注文が決まり文句になったのではと思いました。
お店以外のケースで素敵だと感じた光景の一つは、レジでお釣りをもらうシーン。多くの人(お客)がありがとうと言っていました。バスで下車するシーンでは、運転手より先にお客さんが「ありがとう」と言っていました。これら両方のケースは、日本ではどちらも逆だと思います。サービス提供側がお客を敬って先にありがとうございます、と言っていると思います。しかし、もしお釣りを渡す人やバスの運転手さんが自分の友達だったら。おそらく自分からありがとうと言うと思います。こうした点からも、立場の同等性を感じました。

やり取りにおいては、店員さんは気さくに話しかけ、形式的な返答を求めている印象を受けませんでした。むしろ、コミュニケーションを取ることがマナーであるかのようにも感じました。程度の差はあれど、お客さんとのやり取りを楽しむ感覚を持っているように感じました。また喋り方は、イギリス特有の気取った喋り方はあるものの機械的ではなく、フランクで友達感覚でした。(顕著な階級社会なので、フランクな店でなくなればなるほど、友達感覚さもなくなるとは思います。)コンビニでこそ無愛想でそっけない店員さんやお客さんを見かけましたが、日本のコンビニで見かけるような、スイカを取り出し無言で支払い方法を示すような一方的態度は見かけませんでした。
少し脱線しますが、以前ミャンマー滞在時に参加していたあるヨガクラスは、講師も参加者も欧米人メインでした。参加者が部屋に入る度に講師が「How're you?」と声をかけていたのですが、私は簡単に一言返すだけで済ませていたら、他の人達は簡易的で形式的な返答はしておらず、例えば、「少し疲れてるわ。今週は出張があってね、○○○○で、○○○○で、(以下続く.....)」というように、自分の状況を伝え、それに対しさらに相手が返すという、双方のやり取りがあることが普通でした。

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希薄化するコミュニケーション

機械的で簡易的なやり取りが多い日本の接客シーン。それらは、イギリスで体験したものとは大きく異なり、コミュニケーションの質自体が違うと感じました。人間同士のやり取りなので、全てが良かったわけではありません。無愛想な態度にイラっとしたこともありました。しかし、いずれも人間同士のやり取りを感じる体験ばかりでした。接客=人間同士のコミュニケーションという、本来当たり前のことを終始感じました。

帰国後にハッとさせられた先日の出来事ですが、普段から人の気持ちをとても大切にしているある女性とカフェに入りました。私が「カフェモカで。」と注文すると、その女性は「カモミールティをお願いします。」と注文していました。「(あ、イギリスで自分が見たものと同じだ……)」人に対する態度は、本質的には国も言語も関係ないということに気付かされました。今回はイギリスの例を上げましたが単に事例のためであって、「イギリスが良くて日本はダメ」ということが言いたいのではありません。国や人種は関係なく、コミュニケーションや目の前の相手に対してどのような意識を持っているか、それは自然に態度や言動として滲み出るものだ、ということをイギリスと日本の両方での経験を通じて体感しました。

海外でのコミュニケーション

石田 奈帆美
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