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ハンブルク市民、市民投票で2024年夏季五輪の招致を否決


2015年12月1日

ハンブルク市民、市民投票で2024年夏季五輪の招致を否決
2024年夏季五輪の開催を目指していたドイツのハンブルク。住民投票の結果、招致はノー、との回答が突き付けられました。
11月29日、ドイツ北部のハンブルクとキールである住民投票が行われました。
2024年の夏季オリンピックへの立候補を承認するか否かが問われたもので、主会場候補地はハンブルクですが、キールもヨット競技を共催するため、両都市で行われました。

ハンブルクでの結果は、反対が51.6%の得票。キールは65.57%が賛成でした。
これにより、ハンブルク市は立候補取り止めを表明しました。ハンブルク市もドイツオリンピック委員会も、想定していなかった事態とコメントしています。
今回の住民投票、初期は賛成派のキャンペーンがよく目に付いた印象でした。行政はもちろん賛成ですから、大々的にポスターを展開し、さまざまなスポーツ選手もそれに参加していました。

しかし、草の根では、過去のアテネオリンピックやソチオリンピックのオリンピック関連施設の開催後の利用などリサーチを重ね、それが利用されていない現状・廃墟となっている実態などが多く公開されていました。とりわけ目立った疑問は、1ヶ月のイベントのために、多額のお金をかけて競技場、インフラなどを整備する大義はどこにあるのか。と言うところです。実際、ハンブルクにはすでに多くのスポーツ施設が存在します。しかし、オリンピック開催となれば、既存施設の活用ではなく、新施設建設に主眼が置かれます。ハンブルク市の当初の計画でも、港湾部の再開発地区に大々的に関連施設を建設すると謳われていました。そういった施設の以後の活用が不透明に写ったことは否めません。

賛成派は、地元で世界的なスポーツイベントが行われれば、将来世代への希望や活力につながると盛んに喧伝していました。しかし、グローバリズムやマスメディアがここまで発達した今、身近で選手が活躍しようと世界のどこかで活躍しようと、それを体感することは今いる場所でできるわけです。サッカーワールドカップのパブリックビューイングなどを見ても、それは実感できます。

また、11月半ばに起こったパリのテロが何らかの影響を与えた可能性もあります。わざわざテロを引き寄せるイベントを地元に持ってくる必要はあるでしょうか。いわゆるテロリストは、目立つ場所で事件を起こす傾向があります。世界中から選手・観客が集まるオリンピックは格好の標的。1972年のミュンヘンオリンピックでは、パレスチナ過激派による選手村占拠事件も起こりました。

それでなくても、大会期間中の警備などは厳重になるでしょうし、市内でも封鎖空間などはできるでしょう。そのしわ寄せは現に地域に住んでいる人々の不便に直結します。

今回の住民投票の結果を持って、ハンブルク市がエゴの塊だ・保守的だと判断するのは早計です。住民として冷静に、メリットとデメリットを判断した結果だと私は考えます。普段からハンブルクでは、さまざまなイベントが開催されています。大きな見本市会場も、テニスのドイツオープン会場も、有名な歌劇場だってあります。加えて港湾部の旧倉庫街は、世界遺産に認定されました。地元住民は、そういったもので、自分たちの街の魅力は十分に発信できると確信しているのでしょう。

フランスのクーベルタン男爵が提唱した近代オリンピック運動は、1896年に本大会が開催されてから、長い時がたちました。当時にはなかった商業主義やテロの危険、ドーピングの問題、などさまざまな困難を抱えています。

今一度、オリンピックの意義やその利点を再検証する時期に来ていると思います。単なるアマチュアリズムの発露・国威発揚といった側面は風化しつつあります。
タイトル写真:厳しい表情のハンブルク市ショルツ市長

2024年五輪

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