神社の近くには「天空の城」が?=台湾に残る日本の痕跡「圓山水神社」(2)
2015年8月22日
いまも参拝者がいるかのようにみえる台北北郊の神社。隣接地には「天空の城」があるようですよ。

台湾人によって、今も守り継がれている神社
前回紹介した圓山水神社は、日本統治時代に台北の飲料水用の貯水池の守り神として建てられ、70年前当時は日本人が管理をしていました。日本の統治時代の建物に詳しい片倉佳史氏の著作「台湾 日本統治時代の歴史遺産を歩く」によると、この神社は、日本の神社の台帳には登録されていない私設神社であったようです。
戦後、日本文化的な建造物が破壊された中、荒れ果てていたという圓山水神社は台湾人の手によって復元され、守り継がれている……。
今なお日本の文化を継承している台湾の方々に深く敬服致します。

▲まるで御神木のようだ▲

▲この広場の地下に水槽が区切られて並んでいる▲
突き刺さったパイプは換気用
台北市内を望む、まるで天空の城
さて、神社の周りにはサッカーコートほどの広さの貯水池の跡が、今も残っています。周辺には建物があったであろう基礎や、古びたコンクリート製の塔が点在しています。このあたり一面は手入れがされていないのか、草木が生い茂り、その塔も今にも蔦に覆われてしまいそうです。苔むした場所も多く、まるで古代の遺跡のようです。
目を惹いたのは、貯水池から神社に向かうまでの足元に並ぶ飛び石の様子でしょうか。まさに『苔のむすまで』、日本の国歌「君が代」の歌詞が頭に浮かび、「長い時間ここでじっとしていたのだなあ」と思うと、胸の奥がジーンとしました。

▲77年前の飛び石.表面に付いた苔が長い年月の重みを感じる▲

▲南国風の植物が生い茂る山道。真っ赤な朱蕉の葉▲

▲道ばたにはクワズイモの色鮮やかな実▲

▲この流しはここに生活があったことを思わせる▲
通気筒は、ラピュタのロボット兵のようだ……
先ほどの貯水池跡は地下に貯水槽がある構造ですが、今現在この貯水槽は使われていないようです。その貯水槽を換気するための通気筒が、赤い錆をまとって地面に突き刺さっていました。長い年月の間こんなに錆びるまでずっとこの場所に立っていたのですね……。
それはまるでスタジオジブリのアニメ映画「天空の城ラピュタ」に出てくるロボット兵を連想させます。圧倒的な科学力で天から地上を支配していたというラピュタ。やがて人が去り、残されたロボット兵は、ずっとその場所を管理していました。
この場所は、まさに“天の空高くにあり風の音しか聞こえてこないラピュタ”ではないか……。ここを訪れた日は天気がよく、青空がとても綺麗で自然の音しか聞こえてこないせいか、余計にそのように感じました。

▲70年の歳月はすべて自然の一部として還りつつある▲
「パワースポット」といわれる場所が日本ではよく話題になりますが、ここも実に気持ちのいい所です。“良い気”を感じる、ある意味パワースポットといえるかもしれません。
ロボット兵がラピュタを守っていたように、今も台湾の人によって大事に守られている日本式の神社。台湾の人々から我々日本人への何らかのメッセージではないか、そう感じてなりません。

▲台北の街が一望、まるで天空の城だ▲
「圓山水神社」跡=「剣潭」駅下車後、中山北路を通り抜けて水道局陽明分所まで入り、左側の石段沿いに上がる。休日であれば、陽明分所の鉄門前左側の小道から上ることも可。小さな野菜畑を周って石段につながる。徒歩約10分。 (記述は、台北市政府観光伝播局資料より)
台北北郊にある神社址を尋ねて=台湾に残る日本の痕跡「圓山水神社」(1)はこちら:
http://sekaiguide.com/post/1071/
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