世界ガイド
伊藤雅雄  インバウンド旅行研究家
伊藤雅雄 インバウンド旅行研究家

世界最大のネットワークを持つ、中国の高速鉄道


2015年8月11日

世界最大のネットワークを持つ、中国の高速鉄道
1万6千キロものネットワークとなった中国の高速鉄道。世界の主要ハイスピード列車が集まる「見本市」の様相を呈している。

中国は各国の高速列車が集まる品評会場

 日本の新幹線の技術を「導入した、しない」で、一時は世間で大きな話題にもなった中国の高速鉄道(CRH)。鉄道先進国各国の技術を積極的に取り込んだ結果、中国は「世界中の高速列車が集まる見本市」のような状況だ。日本由来の車両のほか、ドイツの「ICE3」、フランスの「TGV」、イタリアの「フレッチャロッサ」など、欧州の超特急を規範とした列車が使われている。
 中国の高速鉄道の総延長は16,000キロ(2014年末現在)と、世界最大のネットワークを誇る。最高速度は時速350キロの区間もあるが、安全性などの懸念から300~320キロにとどめていることが多い。CRHはその最高速度などによって、以下の3つのカテゴリーに分かれている。

CRHのカテゴリー

・高速動車組列車(Gao Su=頭文字G):最高時速300キロ以上で走れるCRH型電車を使った長距離高速列車
・城際動車組列車(Cheng Ji=頭文字C):最高時速300キロ以上で走れるCRH型電車を使った都市間高速列車
・動車組列車(Dong Che Zu=頭文字D):最高時速200〜250キロのCRH型電車を使った高速列車。長距離と短距離と両方がある。

「四縦四横」旅客専用線

 「四縦四横」とは中国鉄道部が掲げるCRHの敷設計画で、8つある路線の総延長は12,000キロに達する。なお、かなりの区間が建設中だが完成した区間から順次開通している。
※「四縦」南北方向
・京哈旅客専用線(北京-承徳-瀋陽-ハルビン、および瀋陽-大連の支線)全長約1,700キロ、設計最高速度 350キロ
・京滬旅客専用線(北京-天津-済南-徐州-蚌埠-南京-上海、および蚌埠-合肥、南京-杭州の支線)全長1,433キロ、設計最高速度 350キロ
・京港旅客専用線(北京-石家庄-鄭州-武漢-長沙-広州-深圳-香港)全長2,229キロ、設計最高速度 350キロ
・杭福深旅客専用線(杭州-寧波-温州-福州-廈門-深圳)全長約1,495キロ、設計最高速度 250〜350キロ
※「四横」東西方向
・青太旅客専用線(青島-済南-石家庄-太原)全長873キロ、設計最高速度 250キロ
・徐蘭旅客専用線(徐州-商丘-鄭州-洛陽-西安-宝鶏-蘭州)全長1,363キロ、設計最高速度 350キロ
・滬漢蓉旅客専用線(上海-南京-合肥-武漢-重慶-成都)全長2,078キロ、設計最高速度 200〜350キロ
・滬昆旅客専用線(上海-杭州-南昌-長沙-貴陽-昆明)全長 2,066キロ、設計最高速度は 350キロ

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日本の東北新幹線E2系電車をベースとしたCRH2=Photo by KimonBerlin/Flickr

CRHのサービス

 中国の高速列車には、日本で絶滅してしまった食堂車も併結されている。現地では「販売されている飲食物の価格が非常に高い」との悪評もあるが、列車内食堂で食事する体験をしてみるならぜひお試しを。ただ、列車が満員の時は、食堂車の椅子も「指定席」として売られてしまっていることもある。
 さらにユニークなのは、中国には寝台車タイプの高速列車があること。国土が広い中国だからこそあり得るサービスといえる。寝台列車の旅も日本ではなかなか味わえなくなった。行き先によっては、飛行機で飛ぶより便利な区間もあるので、スケジュールに応じて利用を検討してみてはどうだろうか。なお、中国には、高速列車タイプの夜行列車とは別に、寝台特急や寝台急行列車内も運行されている。予約の際は混同しないように注意したい。

中国鉄路高速 CRH

伊藤雅雄  インバウンド旅行研究家
伊藤雅雄 インバウンド旅行研究家

伊藤雅雄(いとうまさお)
大学在学中に、中国語と比較文化論、シルクロード史などを研究。卒業後、旅行代理店に就職するも、1997年の香港返還を機に、エッセイやコラム執筆、書籍制作に携わる編集者兼ライターに転向。過去25年以上にわたり、添乗や視察、取材などの目的で日本人が行きそうな外国の街のほとんどを訪れている。特に中国をはじめとするアジア各地に土地勘がある。

2007年夏より英国・ロンドンに在住。2014年からは「日本最大級の旅行情報サイト・トラベルコちゃん」のレポーターとして従事しているほか、バーチャル編集プロダクション・Watch! CLMBの編集主幹として、アジアの新興国に関する書籍の制作に携わっている。
著書に、日本を訪れる中国人観光客について論じた「中国人ご一行様からのクレームです(三修社刊)」がある。

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