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電車の中で駅弁?=台湾に残る日本の痕跡「駅弁の文化」


2015年7月13日

電車の中で駅弁?=台湾に残る日本の痕跡「駅弁の文化」
外国に来て電車の中で駅弁が食べられるとは! 台湾の新幹線に乗ったとき、同行者に渡された“それ”に、私は衝撃を覚えました。

台湾の電車で駅弁!

 私が初めて台湾を訪れた6年前。台湾新幹線に乗ったとき、同行者から小さな包みを渡されました。
開けてみてびっくり、なんと駅弁だったのです。日本以外の場所で、駅弁が食べられるとは、夢にも思っていませんでした。
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■これが「臺鐵便當」と呼ばれる、台湾では王道を行く電車で食べるお弁当

「便當(ビンタン)」とは?

 台湾は戦前日本が統治していた場所。日本の駅弁文化が残っていたとしてもおかしくはないですね。
 いま、台湾の鉄道は『臺湾鐵路管理局(臺鐵局)」という組織が運営しています。日本統治時代に敷かれた線路もそのまま使われており、当時の面影を残す駅舎も少なくありません。田舎の駅に降り立つと、どこか日本のローカル線の駅に降りたかのような錯覚を覚えることもあります。
 さて、日本では長距離電車に乗るときはおなじみの弁当ですが、台湾では“便當”と書きます。「當」は、「当」の字を中国語の繁体字にしたもの。「弁」の字が「辨」ではなく「便」となっていますね。中国語で「便」の字には、いわゆる「大小便」の便の意味もありますが、「便利」の「便」の方の意味を取って名付けられた俗語のようです。
 台湾にも新幹線が開通し、急行列車で台北から地方に乗るなんて旅をしたがる人も減ったかもしれません。いまでも地方路線を走る特急などでは、車内販売も存続。売り子さんは「ビンタン、ビンタン」と台湾の方言を使って、お弁当を売りに来ます。ときどき「べんとー」と言っているように聞こえるのは「旅の空耳」でしょうか。

便當の中身はこんな感じ

 基本的に中華文化である台湾では、ご飯が冷める前提の食事はしないのかと思っていました。それに南方系のお米は、冷めると美味しくない品種が多いですし。
この写真の便當は、花蓮駅で特急電車タロコ号に乗ったとき購入したものですが、大きな豚肉とソーセージ、お新香、味付きタマゴ、お惣菜が入ってます。
そうなんです、メインの豚肉は見た目、中華料理ですが、電車が描かれた紙の箱の中にご飯とおかずが入っていて、さらにお新香は日本の食文化を引き継いでおり、この組み合わせがなんとも日本ぽくて困惑したのでした。
 あとでわかったことですが、台湾の料理では当たり前の組み合わせみたいです。この便當に使われているご飯は、冷めても美味しいです。
 それにしても外国に行っても電車に揺られながら白いご飯が入ったお弁当を食べるというのは、旅情があって風流ですね。台湾人も同じ感性を持っていたということに、大きな感動を覚えました。

台湾に尽くした偉大なる日本人

 台南の水田のためにダムを作り、2015年に日本でも公開された台湾映画「KANO」にも登場した八田與一さん、米の品種改良に力を入れ「台湾米の父」と呼ばれた農学者の磯永吉さんは、今も台湾で親しまれているそうです。台湾のために尽くしたこの方たちのおかげで、この美味しい「便當」が食べられるのかもしれません。
 便當は駅以外に、街中にも「便當」と看板を出したお店がありますよ。コンビニでも売られていますので、台湾へ旅行したときには土産話として食べてみてはどうでしょうか。

    
筆者のお勧めはやはり台北駅(台北車站)にあるお弁当売り場での購入。価格は台湾元で100元以内。駅構内にあるセブンイレブンでちょっと安めのお弁当も売っているので、どっちを取るかはお好み次第。


台湾でおいしいとされる「池上米」を使ったお弁当を見つけたらぜひ購入されたし。

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