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巣内尚子(すないなおこ)
巣内尚子(すないなおこ)

【世界から見た日本】発展途上国の開発への貢献で最下位に【後編】


2015年12月23日

【世界から見た日本】発展途上国の開発への貢献で最下位に【後編】
途上国開発の貢献度ランキングで、日本は惨憺たる結果に。一体何が起こっているのでしょうか?
米国のシンクタンク「センター・フォー・グローバル・デベロップメント」がこのほど公表した、先進国の発展途上国の開発に対する貢献度を計る「2015年版開発貢献度指数(CDI)」。このCDIにおいて、日本の順位は対象となった27カ国中27位と最下位だった。CDIは直接的な開発援助の取り組みだけではなく、「投資」や「移住」といった項目を含め総合的に発展途上国への影響を計るもの。日本はいったいどの項目に課題があるのだろうか。

技術は世界4位に

CDIは、「援助」「投資」「技術」「環境」「貿易」「安全保障」「移住」の各項目を総合して算出した指数だ。
各項目で日本の順位が最も高かったのは「技術」で27カ国中4位。2013年には日本の国内総生産(GDP)の0.73%が研究開発(R&D)に振り向けられた上、企業のR&D活動への優遇措置が付与されていることが評価された。
ただし、知的所有権政策は他の国に比べて遅れており、ソフトウエアや植物ないし動物の頻出に関する特許については改善の余地が残されているという。
「援助」の順位は11位。日本は2013年に国民総所得(GNI)の0.23%を開発援助に振り向けたが、これは全体の平均0.7%を下回っている。

「環境」や「貿易」「安全保障」が低水準

こうした一方、順位が低いのは「投資」「環境」「貿易」「移住」「安全保障」だ。
「投資」は27カ国中24位。日本は発展途上国への投資を支援してきたが、投資に関連する透明性のランキングが平均より低い上、関連政策を改善する余地があるという。
さらに、「環境」は27カ国中27位と最下位になった。日本はこれまでに気候変動や乱獲を防ぐための複数の国際協定に参加している。だが、1人当たりの熱帯林輸入が高水準な上、ガソリン税が低く、生物多様性に関連する条約に向けた監督・報告が不十分だとされた。
「貿易」は27カ国中26位だ。日本では発展途上国からの輸入品への関税などが高水準にあるとともに、サービス部門の貿易を規制していると指摘されている。
「安全保障」も26位となった。日本は安全保障に関する全ての国際協定に参加し、武器を非民主的国家に輸出していない一方、国際的な平和維持の取り組みへの貢献が限定的だとされた。

移住者・庇護申請者・難民の受け入れに課題山積

そして、「移住」は27カ国中25位になった。日本は国際移住に関する国際条約を批准していないほか、移住者に友好的な統合政策の実施や移住者・庇護申請者・難民に対して国境を開くといった取り組みをしていないために、順位が低くなった。
日本には既に多数の外国人が暮らしているほか、日本で庇護申請を行う人もいる。しかし、移住者の権利を保護したり、庇護申請者を受け入れたりするといった取り組みには課題がある。
例えば発展途上国の出身者が日本で実習生として就労しているが、長時間労働や低い賃金、職場での人権侵害など実習生をめぐる課題が指摘されてきた。他にも移住者の子どもたちの日本語学習や進学などにおける課題もあるほか、難民の受け入れは他の先進国に比べて大きく遅れている。
こうした日本にとって厳しい評価については、開発援助という分野だけではない日本の課題を浮かび上がらせている。ODAだけではなく、より広範囲に国際社会に貢献していくためには、それぞれの分野の改善を促す必要があるだろう。私が中でも関心を持つのは人間に直接大きくかかわる「移住」の面だ。例えば、日本に暮らす外国人の子どもたちの就学をめぐる課題は看過できない上、日本ではほかの国・地域から命をかけて逃れてきた難民の受け入れはまだまだ進んでいない。実習生をめぐる課題の数々もある。そのほかの分野もそれぞれの問題があるだろう。
CDIの結果を、日本の開発援助や国際社会とのかかわりを見直すための一つの手がかりにできるかどうか、そのことが今、試されている。

発展途上国開発

巣内尚子(すないなおこ)
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