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巣内尚子(すないなおこ)
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ベトナムのいま(11) ベトナム人移住家事労働者がサウジで窮地に、出稼ぎブームの功罪【中編】


2015年12月1日

ベトナムのいま(11) ベトナム人移住家事労働者がサウジで窮地に、出稼ぎブームの功罪【中編】
ベトナムからサウジに家事労働者として出稼ぎに行く女性が増えています。ところが、移住労働をめぐる課題は看過できない状況にあります。
ベトナムからの移住労働が拡大する中、最近ではサウジアラビアで家事労働者として働くベトナム人女性が増えている。家事労働者はいわゆる「メイドさん」「お手伝いさん」のことだ。しかし、サウジアラビアで働くベトナム人家事労働者の中には苦しい状況に置かれている人もいる。ベトナムからの移住労働の広がりは、労働者の就労先確保や海外からの送金といった面でベトナムに恩恵をもたらしているだろう。しかし、移住労働をめぐる課題は看過できない状況だ。

休みなし、1日1食

前編で触れたように、サウジアラビアでの就労をめぐっては以前から数々の問題が出ていた。さらに、ベトナム人労働者についても、困難に直面する事例が出てきている。
ベトナムの地元紙ザンチ電子版(2015年11月17日付)によると、南部ホーチミン市の男性は先に、グエン・タン・ズン首相に対し、サウジアラビアで家事労働者として働く52歳の母親が仲介会社と結んだ契約について不適切だとし、苦情を申し立てた。
母親はベトナムの仲介会社と、サウジアラビアでの家事労働者として就労することで契約を締結。この就労契約には、月給1300リヤル(約4万2,517円)やボーナス200リヤル(約6,541円)を支払うことに加え、電話の使用許可や1日3食の支給などを保証する内容が含まれていたという。そして女性は実際に、2015年7月からサウジアラビアで働き始めた。
しかし、女性はサウジアラビアで家事労働者として働く中で、日曜日も就労する必要があった上、ボーナスはない状況だったようだ。さらに1日の食事は1度だけしか与えられず、ベトナムの家族に電話もできなかったほか、1日の就労時間が19時間にも上る長時間労働を強いられた。この結果、母親は病気を患ったが、医師の診察を受けられたのは1度だけだったという。

60度の中で屋上に出された家事労働者

このため女性は仲介会社に何度も助けを求めることとなる。しかし、会社とはなかなか連絡が取れず、やっと連絡が取れたのは9月1日のことだった。
その上、雇用主と仲介会社は女性に対し、就労契約をキャンセルする補償金として6,200万ドン(約33万8,629円)もの大金を支払うほか、帰国のための飛行機代を自分で払うよう求めたという。
このほか、母親の知人4~5人も同様の困難に直面していたという。中には、雇用主によって気温60度の中で家の屋上に出されたほか、食事も与えられないといった深刻な虐待を受けた人もいたようだ。(後編に続く)
タイトル写真:ハノイ市内で働く女性。ベトナムでは女性の大半が働き、中には海外で家事労働者として就労する人もいる。(筆者撮影)

ベトナム人の出稼ぎ

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