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巣内尚子(すないなおこ)
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ベトナムのいま(9)女性が直面する壁【後編】新生児の男女比不均衡への懸念高まる


2015年11月22日

ベトナムのいま(9)女性が直面する壁【後編】新生児の男女比不均衡への懸念高まる
ベトナムにおける女性地位向上への課題は? ハノイに住む巣内尚子さんが伝えます。

低迷する順位

世界経済フォーラム(WEF)はこのほど「2015年版グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート」を発表した。ベトナムのジェンダー・ギャップ指数(GGI)は0.687で、世界145カ国中83位となり、前年の76位(142カ国中)から低下した。ベトナムのGIIは2007年に128カ国中42位となったものの、08年は68位(130カ国中)、09年は71位(134カ国中)、10年は72位(134カ国中)、11年は79位(135カ国中)、12年は66位(135カ国中)、13年は73位(136カ国中)、14年は76位(142カ国中)と、60~70位台後半で推移してきた。さらに15年は83位まで落ち込んだ。
一方で、ベトナム政府はこれまでに、男女平等に関するさまざまな施策を打ち出している。ベトナムでは、長い戦争を経て1976年の南北統一後の国家建設に当たり、女性は労働力という意味でも、さらには国家の施策を進める政治的・政策的な意味でも、常に重視されてきた。
その流れの中で、女性の地位向上や女性保護への意識の高まりから、2006年には「男女平等法」、2007年には「ドメスティックバイオレンスの防止と制御に関する法律」をそれぞれ国会で成立させている。
ただし、今回のGGIの結果からみても、まだまだ男女平等に向けたさまざまな取り組みが必要なようだ。

アンバランスな出生時の性比

とりわけ出生時の性比の問題は、男児を優先する家父長制的な家族規範の存在に加え、出生前診断という技術面での進展と診断を受けることを可能にする経済的な発展/所得向上とがかかわりながら深刻化している。
政府が女性の地位を改善するための施策を講じながらも、それでもなお、子どもに男児を求めるということについて、その背景や各家庭の動機をより丹念に検証した上で対策を講じることが求められる。
例えば、社会保障制度の整備が不十分なベトナムでは、親の介護や経済的な支援を子どもが担うことが一般化している。あくまで仮定にすぎないが、そのため子どもを持つことは家族の暮らしにとって「保険」となり、女児よりも高い賃金を得られる可能性のある男児が好まれるというような推測もできるかもしれない。もちろんこれはあくまで筆者の想像にすぎないのだが、こうした社会保障の状況が、男児選好にどうかかわるのかなど、多面的な視点から出生時性比の不均衡について検証することが必要だろう。

フィリピンが7位に

2015年のランキングでは1位はアイスランド。2位~10位まではノルウェー、フィンランド、スウェーデン、アイルランド、ルワンダ、フィリピン、スイス、スロベニア、ニュージーランドの順だ。
欧州勢が上位の多くを占める中で、東南アジア諸国連合(ASEAN)からフィリピンが7位に入っていることが注目される。
ASEAN加盟国ではほかに、ラオスが52位、シンガポールが54位、タイが60位、ブルネイが88位、インドネシアが92位、カンボジアが109
位、マレーシアが111位などとなっている。これに対し、経済力ではASEAN諸国を圧倒しているはずの日本は101
位にとどまり、ASEANの多くの国よりも低い順位だった。
また、ワースト1はイエメン。144位はパキスタン、143位はシリア、142位はチャド、141位はイラン、140位はヨルダン、139位はモロッコ、138
位はレバノンだった。
巣内尚子(すないなおこ)
フリージャーナリスト、翻訳者。1981年生まれ。東京学芸大学在学中に、ドキュメンタリー映画のアシスタントとして、取材、撮影補助などの仕事に従事。卒業後は日本の業界紙勤務を経て、フランスに滞在。その後、インドネシア、フィリピン、ベトナムにて記者やフリーランスライターとしての仕事に従事し、東南アジアの経済や社会の動きを取材・執筆。これまでに「WEBRONZA」「JBpress」「週刊金曜日」「連合」などに寄稿。Global Press(在外ジャーナリスト協会)メンバー。
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