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巣内尚子(すないなおこ)
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ベトナムのいま(8) 女性が直面する壁【前編】 ベトナムの男女平等が後退?


2015年11月21日

ベトナムのいま(8) 女性が直面する壁【前編】 ベトナムの男女平等が後退?
ベトナムの男女平等は後退したのだろうか? ハノイに住む巣内尚子さんが伝えます。
ベトナムの男女平等は後退したのだろうか――。世界経済フォーラム(WEF)がこのほど発表した「2015年版グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート」で、ベトナムのジェンダー・ギャップ指数(GGI)は0.687で、世界145カ国中83位となり、前年の76位(142カ国中)から低下した。ベトナムの順位は2007年に42位(128カ国中)だったが、このところ低迷。ベトナムの83位という順位は日本の101位に比べれば高いものの、男女の平等に関しては後退しているように見える。ベトナムにおける男女格差の現状を追いたい。

高い女性の労働参加率

GGIは、「経済的参加と機会」(労働参加率、賃金の平等、所得、議員・幹部公務員・管理職、専門職・技術職)、「教育的達成」(識字率、初等教育就学率、中等教育就学率、高等教育就学率)、「健康と生存」(出生時における新生児の性比、健康寿命)、「政治的エンパワーメント」(議会の女性、閣僚の女性、女性首脳)の各項目を総合して算出したもの。
ベトナムは、「経済的参加と機会」で世界145カ国中41位につけた。これは専門職・技術職の項目で1位になっていることと、所得で19位、労働参加率で21位を獲得していることが背景にある。ベトナムでは以前から女性の労働参加率が高く、女性の多くが就労してきたためだ。
ただし、賃金の平等に関しては78位、議員・幹部公務員・管理職では87位となっており、ベトナム人女性は就労し稼ぎを得ているにもかかわらず、男性との賃金格差がある上、職場内では男性よりも低い地位に留め置かれていることが指摘できるだろう。

「男児優先」で出生時における新生児性比が不均衡に

この半面、ベトナムのランキングを大きく押し下げたのは「健康と生存」の項目だ。健康寿命については1位だが、出生時における新生児の性比は141位と、世界的にみても最低レベルになっている。
ベトナムでは「子どもには男の子がほしい」という男児を優先する傾向があり、出生時における新生児の性比では男児の割合が高く、女児の割合が低いという現象が起きている。
背景には、儒教の影響を受けた家父長制的な文化から「家」の存続のために男の子を重視するという文化的土壌に加え、出生前の性別診断と中絶手術の広がりがあるとみられている。その上、ベトナム政府は子どもの数を2人までに制限する2人子政策をとってきた経緯もあり、各家庭が胎児の性別によって「産むか、産まないのか」を決める動きが広がっているようだ。
つまりベトナムでは生まれてくることができなかった女の子たちがいるのだ。このことは、ベトナムという国における女性の弱い立場を鋭く指し占めすだろう。
一方、「教育的達成」は114位。経済成長に伴い教育熱が広がり、進学率が高まっているベトナムだが、高等教育就学率は105位と低水準だ。
「政治的エンパワーメント」は88位だった。議会の女性は58位、女性の首脳では64位だったが、閣僚の女性では119位にとどまった。(続く)
巣内尚子(すないなおこ)
フリージャーナリスト、翻訳者。1981年生まれ。東京学芸大学在学中に、ドキュメンタリー映画のアシスタントとして、取材、撮影補助などの仕事に従事。卒業後は日本の業界紙勤務を経て、フランスに滞在。その後、インドネシア、フィリピン、ベトナムにて記者やフリーランスライターとしての仕事に従事し、東南アジアの経済や社会の動きを取材・執筆。これまでに「WEBRONZA」「JBpress」「週刊金曜日」「連合」などに寄稿。Global Press(在外ジャーナリスト協会)メンバー。

男女平等

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